社労士事務所 SteadyStep
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2025.05.25
賃金のデジタル払い(2)

スモールビジネスの労務を徹底サポート!!
東京都目黒区の社会保険労務士、社労士事務所SteadyStep <ステディステップ> です。
当事務所は、小規模企業のお客様を中心に、会社の労務をサポートしています。
労務とは、給与計算・労働関係の法令対応・職場づくりなど、従業員を雇うと必要になる作業のことです。
このブログでは、労務管理のヒントになる話題を紹介しています。
前回の記事に続き今回のテーマも「賃金のデジタル払い」です。
前回の記事では、賃金を「○○ペイ」に支払うことを「賃金のデジタル払い」と呼ぶこと、そして、会社が「賃金のデジタル払い」を導入するときの流れを紹介しました。
引き続いて今回は「賃金のデジタル払いを導入するべきか」について考えます。
はじめにお伝えしますと、「今すぐ慌てて導入するメリットはない」という結論になります。
こんな後ろ向きな結論になる理由が気になる方は、ぜひこの先もお読みください!!
※この記事では、いわゆる「○○ペイ」(QRコード決済)を「デジタルマネー」と表記しています。
また、厚生労働省の表記に沿って、デジタルマネーの運営業者を「資金移動業者」、資金移動業者のうち厚生労働省の指定を受け賃金支払いに対応した業者を「指定資金移動業者」と記載します。
<賃金のデジタル払いのメリット>
新しいモノやサービスが普及し、広く利用されるためには、利用することによって何らかのいいこと(メリット)を得られる必要があります。
では、「賃金のデジタル払い」のメリットは何でしょうか。
指定資金移動業者のwebサイトを見てみますと、
・賃金の受け取り方法が増えることによる従業員満足度の向上
・新しい制度を取り入れることによる企業イメージの向上
・デジタルマネーにチャージする手間がなくなる
などがあげられています。
<賃金のデジタル払いのデメリット>
続いて、デメリットについて考えます。現在の制度においては、賃金のデジタル払いを導入することで会社の賃金支払業務が増える可能性があることがデメリットです。
手間が増えてしまう理由は、デジタル払いできる賃金の額に制限があるためです。
デジタル払いで支払うことができる賃金の額は、厚生労働省の通達により、
「利用実績や利用見込みを踏まえ、為替取引に用いられる範囲」とされています。
この点の解釈を労働局に確認したところ、
『日常生活で利用する範囲を超えた金額をデジタル払いで支払うことは想定していない』という趣旨の回答でした。
また、このような厚生労働省の方針を受けたためか、指定資金移動業者の側でも、デジタル払いで受け取れる金額に10万円から30万円の上限を設定しています。
その結果、支払われる賃金(手取りの賃金)の額が指定資金移動業者の設定する上限額を超える場合、会社は2か所に送金(振込み)することになります。
例えば、上限が20万円の指定資金移動業者への送金を希望する従業員がいて、その方に支払う賃金が30万円だとすると、超過する10万円は他の口座に別途振り込むことが必要です。
すなわち、賃金が上限額を超える従業員が多いほど、賃金支払い業務の手間と手数料が増えていきます。
もちろん、考え方は会社しだいではありますが、前半で取り上げた賃金のデジタル払いのメリットは、手間と手数料の増加というデメリットを上回るとは言えないのではないでしょうか。
デジタル払いできる金額の上限が緩和され、2か所への送金が必要になる方が少なくなるまでは、賃金のデジタル払いを積極的に導入するメリットを感じられない、というのが、現時点での率直な印象です。
本記事は、筆者個人の見解によるものです。
記事の内容は、公開日時点の法令に準拠しています。
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